文系でもわかるレオロジー

ペンキの缶に「よくかき混ぜてください」と書かれているのは、色を均一にするためだけじゃないんですね!

その3 チキソトロピーとレオペクシー

■チキソトロピー
チキソトロピー(チクソトロピー)とは、かき混ぜたり、振り混ぜたりすることにより、力を加えることで、粘度が下がる現象をいいます。 これだけでは、前回説明した擬塑性流体との違いがわかりませんね。。。では、どう違うのでしょうか?

かき混ぜることによって、粘度が低下するという点では、擬塑性流体もチキソトロピーも同じことのように思えます。2つの大きな違いは、与える力だけでなく、時間経過に伴い粘度が変化するか、しないかというところです。チキソトロピーを示す流体は、一定の力をかけ続けることで粘度が下がったり、下がった粘度がある一定時間放置したりすると元に戻ったりします。そしてこのような性質を持つものを、「チキソ性がある」とか「チキソが強い」と表現します。

身近なものでチキソトロピーの性質を応用しているのが、ペンキなどの塗料になります。
ペンキは、かき混ぜることにより、粘度が下がって塗りやすい状態となり、ハケやローラーで壁に容易に塗ることができます。ペンキを塗る前によくかき混ぜるというのは、単に色ムラをなくすだけでなく、チキソ性を引き出す作業でもあったのです。さらに、壁に塗られたペンキは直後に粘度が上がり(元に戻り)、垂れない状態となって乾燥します。これもチキソトロピーの性質です。「塗りやすく、垂れにくい」そんな理想的なペンキは、チキソトロピーをうまく利用しているのです。

■レオペクシー>
レオペクシーは、正直、説明に困るちょっと厄介な現象です。というのも、業界によって、あるいは読む本によって定義が異なるということです。レオペクシーの定義は大まかに次の2通りがあります。

(1)力を加えたことで、粘度が下がってしまったチキソ性流体に緩やかな振動、撹拌を加えると、そのまま放置しておくよりも、より粘度が上昇すること。
(2)逆チキソトロピーとも呼ばれる現象で、流体に力を加え続けたとき、時間の経過とともに粘度が増加していく現象のこと。

どちらの立場をとるにしても、撹拌などで力を加えることにより粘度が上がるという点では同じです。 ただ、(1)ではチキソトロピーの中に含まれる現象となりますが、(2)ではチキソトロピーとは相反する現象ということとなり、内容が違ってきます。どちらの立場をとるかは、読者のみなさんの判断に委ねたいと思います。 さらに、難しいことは、身近にレオペクシーを示す現象がほとんどないのです。文系にもわかるレオロジーと題して身近な例を紹介してきましたが、今回ばかりは身近な例が見つかりませんでした。。理系にもわかりにくいのがこのレオペクシーなのです。

 

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