文系でもわかる分散 その2

レクチャー : P先生
大手からベンチャーまで、化粧品業界で長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト。工学博士。

質問者 : Mさん
100%文系の広報担当。分散のこと、機械のこと、実は色々よくわかっていません(^-^;
本紙の美容コラムでおなじみの乳化分散技術研究所® 高橋さんが「分散」について丁寧にわかりやすく解説する「文系でもわかる分散」第2弾!今回は私たちの身の回りにある分散をご紹介します。

ビンを並べて何しているんですか?

前回のおさらい実験です。ココアは……

ココアは分散、覚えました!

では、コーヒーは?

溶解です! おい、鬼太郎!ういっす!

妖怪違いです……。てか、親父ギャグは僕の役目でしょ!
Q1.レーザーで実験!分散と溶解の違いって?

ちょっと実験してみましょう。コーヒーとココアにレーザーポインタを当ててみます。

わー、全然違う!コーヒーはレーザー光線がまっすぐなのに、ココアは全体がレーザーと同じピンク色ですね。


ココアは固体(ココアパウダー)が液体(水)の中である程度の大きさを保っているので、光が散乱するわけです。コーヒーは分子がばらばらになっていて、光は邪魔されずにまっすぐ通ります。ではもうひとつ、ウーロン茶にレーザーを当ててみます。

コーヒーと同じで、まっすぐ通ってる。ウーロン茶は溶解ですね!

正解です。
Q2.分散はどんなところで使われているの?

ココアはお湯とココアパウダーの分散でしたよね。飲み物のほかに、例えば食べ物でも分散はあるんですか?

ココアを固めるとチョコレートになります。これは固体のカカオ脂の中にココアパウダーが分散したものです。千歳飴みたいな白いアメは、透明なアメの中に空気が分散したものです。ホイップクリームやビールの泡は水の中に空気が分散したものです。飲み物や食べ物以外にも、身の回りには分散しているものがたくさんあります。表を使って説明しますね。


この世に存在するものは、必ず気体、液体、固体の3種類に分けられます。分散は、これらの中の違う2種類以上が同時に存在していて、ある一方の中にもう一つがばらばらに存在することを言います。ココアを例にしますと、この場合、お湯を連続相または分散媒、ココアパウダーを分散相または分散質と言います。(私は「連続相」「分散相」の方をよく使います。)それぞれ、自分たちの固体あるいは液体としての個性を主張しながら、連続相の中に、分散相がばらばらに存在するのが分散状態と言うわけです。思いつくままにいろいろ挙げてみましたが、世の中には分散を利用したいろんなものがあるんです。乳化もある液体の中に別の液体がばらばらに存在している状態なので、分散の一種ということになります。


乳化も分散の一種だったなんて!(乳化って??という方は当社かくはん塾「文系でもわかる乳化」を読んでくださいね。)
Q3.界面とは?

本当にいろいろな分散があるんですね。あ、でもこの表だと、気体と気体の分散例がないですね?

気体、液体、固体それぞれの間には、必ず境目が存在します。それを界面と呼びます。気体と気体の間には界面ができませんから、分散とは言いません。この界面は、例えて言うと国境線みたいなもので、とても緊張した状態にあります。こういう界面は小さければ小さいほどよいです。この界面をできるだけ小さくしようとする力を「界面張力」と言います。片方が空気の場合を特に「表面張力」と言いますが、このワードは聞いたことがあると思います。
Q4.分散は延命治療?!

いろいろな分散があるってことは、凝集もいろいろありそうですね。ココアみたいにスプーンで解決できないときは、どうするんだろう?

簡単に凝集しないためにひたすら延命治療を施します。特に化粧品にとって粉同士が凝集して沈んだり分離したりするのは死を意味しますからね。分散はいずれ死んでいく運命にありますから、それを少しでも長く持たせるようにするのです。

延命治療?!何だかお医者さんみたいですね。ものづくりのプロの方は、うまく分散させるために、スーパードクターのような技をお持ちなんですか?

技と言いますか、うまく分散させようとするとき、我々が常に考えているのが分散の3要素と呼ばれるものです。

分散のさんようそ?何やらキーワードっぽいですね??

じゃ次回はこのキーワードを説明しましょう。液体に気体がたっぷり分散したふわふわクリームのショートケーキがあるので、おやつにしませんか?

わーい!ふわふわの分散、大好きです♪
文系でもわかる分散その2はここまで。
次回はいよいよ分散の3要素にせまります。お楽しみに!
