文系でもわかる分散 その1
            レクチャー : P先生
大手からベンチャーまで、化粧品業界で長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト。工学博士。
            質問者 : Mさん
100%文系の広報担当。分散のこと、機械のこと、実は色々よくわかっていません(^-^;
当社の研究機関 乳化分散技術研究所®が攪拌の奥深さをお届けする「かくはん塾」。中でも大人気シリーズ「文系でもわかる○○」に待望の新作登場です。本紙の美容コラムでおなじみの高橋さんが「分散」について丁寧にわかりやすく解説します!
~ある日のおやつタイム~
  今日は寒いですねー。私はホットココアにしました。ココアはよく混ぜないとですねー。ええとスプーン、スプーン。
  ココアは分散ですからね。よく混ぜてくださいね。
  ココアはぶんさん?はて??
  おやつでも食べながら、ちょっと説明しましょうか。
  文系の私にもわかるように、やさしく解説をお願いします!
Q1.分散=ばらばらってこと?
  以前、子どもに「ぶんさんとうこうって何?」と聞かれて「ばらばらに学校に行くことだよ」と答えたら「ぶんさんて、ばらばらってこと?」となったのですが、分散=ばらばらという考え方で合っていますか?
  正解!このココアを使って説明しますと、お湯の中にココアパウダーがばらばらに散らばって存在することを分散と呼んでいます。すなわち、沈んだり、浮いたり、どこか一か所に集まったりしていない状態のことです。ついでに言いますと、分散登校の逆が集団登校ですね。集団登校の様にココアパウダーが集まって存在することは凝集と呼んでいます。「凝集」したものを「分散」させるのが、我々が作っている攪拌機の役割の一つです。
Q2.ココアが濃くなる訳は?
  ココアは時間がたつと、下の方が濃くなってしまいますよね。私は飲もうとするとあれー?てことがよくあります。
  モノには常に重力が働いています。お湯とココアパウダーを比較しますと、ココアパウダーの方が密度(比重)が大きいので沈みやすくなっているのと同時に、ココアパウダー1個1個の粒子は、例えば酔っぱらいのおっさんが、千鳥足であっちへふらふら、こっちへふらふらしているような運動をしていますから、ほかの粒子とよくぶつかります。粒子同士がぶつかると何個か集まって凝集します。凝集するとより重くなりますから、さらに沈みやすくなって、下の方が濃くなってくるのです。
Q3.溶解とどう違うの?(分散と溶解の違い)
  お湯にインスタントコーヒーを溶かしても、下の方が苦くならないですよね?凝集がないからですか?
  いいとこついてきますね!ココアは粉のままお湯に分散した状態ですが、インスタントコーヒーをお湯に溶かすといつの間にか粉とお湯の境目がなくなってますね。砂糖も同じです。こういう状態を溶解と言います。自然は人間の様に辛抱したり努力したりしませんから、楽な方へ楽な方へ進みます。コーヒー同士で束縛されているより、お湯と一緒になった方が気持ちよくて楽ちんなので、お湯との境目(界面)がなくなって一体化しているのが溶解状態です。
  溶解は元に戻ることはないんですか?
  同じ温度、同じ圧力、同じ濃度など条件がそろえば、元に戻ることはありません。半永久的に安定です。もうひとつ分散と大きく違うところは、どこをとっても同じ濃度であって時間がたっても変わらないことです。ただし、元々一定温度の液体に溶解する量は決まっています。すなわち、溶解には定員があるのです。砂糖がいくらお湯と仲良しでも満席になったらごめんなさいということで、一体化できずに砂糖の状態のまま溶け残ります。この量は温度ごとに決まっていて、これを(飽和)溶解度と言います。砂糖の場合、温度が下がると溶解度が下がって水にあまり溶けなくなります。だから、アイスコーヒーには冷たい水にも溶けやすいシロップを使うのです。
  アイスコーヒーのシロップには、ちゃんと理由があったんですね!
Q4.凝集はなぜ起こる?
  ココアパウダーは粉だから凝集しやすいのかな?粉じゃなかったら、凝集しないで分散したままでいられますか?
  さっきもお話しましたように、自然は常に楽な方へ楽な方へ流れます。粉にとっては分散してばらばらになるより、凝集して沈んでいる方がずっと楽なのです。すなわち分散して均一でいるのは粉の粒子たちにとって苦痛なのであって、必ずくっつきあって沈んだり浮いたりする運命にあります。
  なるほど~。くっつきやすい性質なんですね。あ、ココアが冷めちゃったのでちょっとレンジしてきます!
  ついでに私にも1杯ください。スプーンでよーく分散したやつを!
  はい、少々お待ちください!
文系でもわかる分散 その1はいかがでしたか?
次回は分散と溶解の違いがよくわかる実験をします。お楽しみに!
