社報shinko〜親交〜 2015年04月号

化粧品のスペシャリスト、高橋さんに聞く! 美容のあれこれ
■メークアップ製品と色

乳化分散技術研究所® テクニカル・ディレクター 高橋 唯仁

大手化粧品メーカで長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト、乳化分散技術研究所®の高橋さんに、美容に関する素朴なギモンに答えてもらおう!と始まったコーナー。前回、前々回は数々のヘアケアのギモンに答えていただきました。今回はぐっと春らしく、色と分散についてお話していただきました。



春がやって来ました。春は、口紅など彩り鮮やかなメークアップ製品が旬の季節です。暖かくなって花々が咲き誇るように、人々もまた、冬の寒さから解放されてテンションが上がるからでしょうか、化粧品メーカ各社も、春の到来に合わせて、新色を投入した新しいメークアップ製品のキャンペーンを開始します。これは、毎年恒例の年中行事と言ってもよいでしょう。
メークアップ製品は、ファンデーションなど肌の色や質感を整えるベースメーク、口紅やマスカラなど部分的な彩りを加えるポイントメークに分けられます。メークアップ製品の命は、何と言っても「色」です。そこで今回は、春の華やかさを演出する「メークアップ製品と色」の話をしたいと思います。

化粧品の色付けに用いられる原料は、一般に色材と呼ばれています。色材には、大きく分けて2種類あります。染料と顔料です。2つとも名前は耳にしたことがあると思いますが、その違いは何でしょうか?正解は、水や油などの媒体に溶けるものが染料、溶けないものが顔料です。身近なものに例えると、かき氷のシロップは染料、ティラミスのココアパウダーは、顔料ということになりますね。
顔料は、塗料、絵の具、プリンターのインクなどいろいろな用途に使われていますが、「顔料」というぐらいですから、そもそも顔につけるもの、化粧に使われるものとして古くから認識されてきました。ですから、メークアップ製品には、顔料の方が圧倒的に多く使われています。

化粧品に配合される顔料は、着色顔料、白色顔料、体質顔料、パール顔料などいくつかの種類に分けられ、それぞれ使用目的が違います。着色顔料は、その名の通り、製品に色を付けるものです。赤、青、緑、黒などの顔料を組み合わせて、微妙な色調を出していきます。白色顔料は、白い色を出すと同時に、シミ、そばかすを隠したり、紫外線から肌を守ったりする効果もあります。一方、体質顔料は、色を付けるというより、むしろ光沢や伸び、使用感などを調整する役割で使われます。また、パール顔料は、光の干渉を巧みに利用した光沢のある色材です。アイシャドウなどのポイントメークを鮮やかに発色させるのに威力を発揮します。
メークアップ製品では、このように何種類かの顔料粉末を、水や油、保湿剤、増粘剤、ワックスなどと一緒に混ぜ合わせて、色調や質感をアレンジします。しかし、顔料を用いる発色は、この色とこの色を混ぜたら必ずこうなるという単純なものではありません。きれいな色を安定的に作り出すには、顔料を高度に分散させる技術が必要なのです。顔料分散の決め手は「ぬれ」、「微細化(解砕)」、「安定化」の3つの要素です。これらのどれが欠けても、きれいな色を再現することはできません。プライミクスの攪拌技術は、この「微細化」のプロセスに大きく貢献しています。化粧品顔料は、元々、大きさがそろった細かい粒子ですが、原料として入手した状態では、粒子同士がくっついて凝集している場合が多く、原料本来の色感を出すには、機械的なせん断力や衝撃力で一個一個の粒子として分散させる必要があります。したがって、ここで言う微細化とは、大きなかたまりを粉砕して細かくすると言うより、互いにくっついた粒子を機械的な力でほぐす作業と言った方がよいでしょう。ここで十分ほぐしておかないと、ちゃんとした色が出ないばかりか、「浮き」や「色別れ」などの色むらが生じる原因になり、しまいには化粧崩れにつながってしまうのです。
また、良く分散させることによって、製品の質感も向上させることができます。たとえば、書道をやったことがある方はおわかりになると思いますが、よくすった墨(すなわち黒色顔料)は、非常に光沢があってきれいです。これは、水に分散した墨の濃度が高くなるばかりでなく、墨の微粒子がほぐれてよく分散していることによって、光沢を増した結果です。化粧品も同じです。分散の良い製品は、光沢が全然違うことが知られています。

ここでちょっと実験です。白、赤、黄色の顔料を適当に混ぜ合わせて、簡単なクリーム状ファンデーションを作ってみました。(下の写真を参照。)それぞれ顔料の比率は同じです。にもかかわらず、攪拌の方法によって、微妙に色や質感が違うことがおわかりいただけますでしょうか?一生懸命手で練ったものと、3,000回転で機械的に混ぜたものでは、色もつやも明らかに違うことがおわかりいただけると思います。
このように、顔料の粉末をきれいに分散させて、色材の持つ独特の外観、質感を引き出すために、「混ぜる技術」が活躍します。すなわち、良い攪拌機、分散機は、顔料分散の必須アイテム。春の華やかさを演出するために、我々の技術が一役買っていることを、大変嬉しく思っています。


クリーム状ファンデーション実験拡大写真
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